ロケ10日目
8月19日(金) 最終日

遂に10日間に及んだロケも最終日を迎える。

まずは「Thank you」ミュージッククリップ版主役の一人20才真琴役の渡辺奈緒子さんのシーンを撮影していく。僕は初めて「Thank you」を聞いた時、どんな女の子なんだろう、と色々な想像を巡らせた。気が強そうで、美しくて・・・難しい。そして総勢200名以上の候補の方から選ばれたのが彼女だった。
オーディション会場にやってきた、凛々しくもどこか脆さを合わせ持っているような彼女は、まさに真琴だった。

さてこの日は、美大生の彼女が絵を描くシーンがメインなのだが、これの準備がまた大変だった。自画像や大吾と歩いた田園、大吾の顔・・・。沢山の絵を用意し、撮影に臨む。実際は当然、絵画の先生に描いて頂いているわけだが、事前に監督との綿密な確認が必要だった。その中の一つ。真琴の自画像を制作するにあたっては、真琴役の渡辺さんの写真を様々な角度から、約1センチごとに角度を変え山の様に撮影し、その膨大な写真の中から監督とカメラマンが選んでいく。この角度だとカメラが鏡に映ってしまうとか、この角度では実際には自画像が描けない云々、そして大事なのは彼女の美しさを損なわない事。やっと選ばれた一枚の写真を元に絵を描いて頂く。鉛筆で描かれた繊細な絵は微妙なニュアンスで監督のイメージとなかなか合わず、何度も先生とのやりとりが繰り返された。そしてようやく「スノッブな君」に相応しい真琴の自画像が完成したのだった。
そして本番。何とその絵は芝居でぐちゃぐちゃにされてしまうのだ。
なんだか、非常に勿体無い気持ちになってしまうが、現場ではそんな事は言ってはいられない。皆その絵をどうぐちゃぐちゃにするか、それをどう撮影するかについて真剣に取り組んでいる。事前に内容を承諾してくれている先生も少しだけ寂しそうな顔をしていた。改めて、準備には時間が掛かるが撮影は一瞬だなぁ、なんて思ったりしてしまった。

やがて、無事に美術学校での撮影も終わり、今回のロケの最終現場である主人公大吾のアパートへ移動する。作中でカメラを扱う森岡君は、もともと写真に興味があったらしく、カメラを楽しそうに扱う。この日最後の暗室での撮影も見事にクリアし、ミュージッククリップ「Thank you」及び、映画「君と歩いた道」は無事にクランクアップを迎えた。

現場がクランクアップの歓声包まれる中、森岡君は監督からプレゼントを貰っていた。それは、小さな小さな白い花が咲いた鉢植え。物語の重要なアイテムなのだが、それを大事そうに抱えて帰ってゆく後ろ姿がとても印象的だった。

そして過酷な真夏のロケも、無事に終わりを迎えた。

(制作部 野村)